第3章:悲しみと希望の狭間で
第14話「出発前の再会」
エドワード王との謁見。ナナンにとっては初めてのことだが、セーラは二度目の経験である。
エドワード王は、前回セーラに話した内容を、ナナンにも簡単に説明した。
エルガーデン大森林へ行き、今回の事件の真相を調査するとともに、エルフたちの協力を得てほしいということらしい。
「ナナンよ、改めてエルガーデン大森林への調査を正式に依頼する」
王は真剣な眼差しでナナンを見つめ、エルフの長への親書を渡した。
「エルフの長は、この親書を見れば、お前たちに協力してくれるだろう」
王の話によると、伝承では世界樹は「観測する者」「予言する者」としての役割を担っているらしい。
未来を取り戻す手がかりが得られるかもしれない、と王は期待を寄せているようだ。
「今回の危機は、単なる戦争では済まないかもしれない。世界の存亡に関わる……そんな予感がするのだ」
王の言葉に、ナナンは背筋が寒くなるのを感じた。
その後、ナナンとセーラは別室に呼ばれた。
豪華なソファーに腰を下ろすと、給仕係が高級そうな紅茶と上品なお茶菓子を運んできた。
場違いな雰囲気に、ナナンは少し緊張してしまう。
やがて、王と宰相が現れた。
「二人を呼んだのは他でもない。追加で伝えておきたい情報があってな」

王は重々しい口調で話し始めた。
王国暗部の調査によると、5年前の聖王国の一件……あの一夜にして国全体がアンデットの巣窟になってしまった事件以来、不審な者たちの噂が出始めているという。
「不審な者……ですか」
ナナンが呟くと、王は頷いた。
「そうだ、異端者と呼ばれる者たちだ。被害に遭った国や、その周辺国も、秘密裏に調査をしているらしい。しかし、まだ協力体制を取るまでには至っていないようだ」
事態は、ナナンが想像していたよりも、はるかに深刻なのかもしれない。
◇ ◇ ◇
王城を後にしたナナンとセーラは、ミラの様子を見に、大神殿の医務室へ向かった。
「ミラ!」
ベッドに横たわるミラは、ナナンの声にゆっくりと目を開けた。
「ナナン……?」
ミラの意識ははっきりしている。
ナナンの作った魔法薬が効いたのだ。
ナナンは安堵したが、すぐに表情を曇らせる。
「ミラ、ごめん……! ミラの、お父さんとお母さんを……助けられなかった……!」
ナナンは涙ながらに謝罪した。しかし、ミラは……。
「……もう、知ってる。……お父様もお母様も、きっと、ナナンなら許してくれるって」
ミラは、掠れるような声で、それでも精一杯の笑顔を浮かべて、ナナンに言った。
「それに……弟を助けてくれて、ありがとう」

そうだ、ミラの弟も、ナナンの薬(希釈されたものだが)で一命を取り留めたのだ。
「……必ず、戻ってくるから」
ナナンはミラの細い手を握りしめ、そう約束した。
普段であれば、照れ隠しに悪態をつくような場面だが、今のミラにその余裕はない。
◇ ◇ ◇
大神殿を出ると、ナナンが魔法薬で救った人々が、ナナンとセーラを待ち構えていた。
その中には、ミラの弟の姿もある。
「ナナン様、本当にありがとうございました!」
「どうか、ご無事で……!」
人々は、涙ながらにナナンへ感謝の言葉を伝える。
「……うん、みんなの期待、絶対に裏切らない!」
ナナンは、改めて決意を新たにした。
ふと、ナナンは気になっていたことを尋ねる。
「あの、すみません! ライナスって人、知ってますか?」
ナナンが神官の一人に尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「ライナスでしたら、神殿長様の使いで、一週間ほど前に出国されましたよ」
ライナスは無事だったのだ。ナナンは、少しだけ安心した。
◇ ◇ ◇
多くの人々の想いを背負い、ナナンとセーラは、エルガーデン大森林へ向けて出発した。
これから、どんな冒険が待っているのだろうか。
そして、ナナンは、この重大な使命を果たすことができるのだろうか。
不安と期待が入り混じった複雑な感情が、ナナンの胸中を渦巻いていた。

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